BLOG

2016/09/16

患者の考える原因や希望する治療が施術者の診立て・方針と合致するとは限らない
前後即因果の誤謬

施術は一回一回が真剣勝負。三重県津市の鍼灸師、西出隆彦です。

 

 

さて、我々は、ある出来事「A」が起こった時、その直前にあった出来事「B」が出来事「A」を引き起こした原因であると考えてしまいがちです。

 

例えば「きのう長い間立ちっぱなしだったから、今朝から腰が痛い」とか。

 

 

はたしてそれは、本当でしょうか。

 

 

実は“立ちっぱなし”は関係なくて、「昔患っていた結核の菌がまだ残っていて、それが腰の骨に感染した」ことが原因かもしれません。たまたま今朝からその症状が出始めたと。

 

“立ちっぱなし”と“腰痛”とは、前後関係はあっても因果関係がないわけです。

 

 

このような事象を、前後即因果の誤謬(ぜんごそくいんがのごびゅう)といいます。

 

 

結核性脊椎炎は極端な例としても、施術者が患者の認識の誤り(前後即因果の誤謬)に遭遇するのはそれほど珍しい事ではありません。

 

何か症状を訴えられたとき、必ず「原因に心当たりはありますか?」と尋ねるのですから、当然といえば当然です。

 

しかし多くの場合、問診や触診、各種テストを重ねて施術方針を決定していくなかで、施術者は「患者様の言う原因」の誤りに気づきます。(はっきり気づかないまでも、怪しいなとは感じる)

 

そして施術者は状態や問題の原因(と思われる事柄)などを説明し、施術方針を伝え、同意を得て施術を始めるのですが…。

 

 

ここで、問題の生じることがあります。

 

「患者の信じる原因」と施術者が推察した原因とに違いがある時、稀に施術の同意を得られないことがあるのです。

 

あるいは、同意はするけれど真に納得はしていないか。こちらは時々あります。施術には進めるものの、心理的な要因によって効果を感じにくくなる可能性が高い事例です。

 

 

 

施術者は、なるべく言葉を尽くし実例も示して、納得していただけるよう務めています。

 

務めてはいますが、他の施設で永く治療をされていた方や、特に信じる力の強い方にはなかなか通じないのも事実。

 

そのようなとき、施術することを断るか、患者の求めるとおりに施術するか、あるいは患者の求めるとおりに施術しながら、自分の方針でもこっそり施術してしまうか。これは施術者それぞれかと存じます。一番最後のは同意が得られていないわけですから、良い事とは言えませんが…。

 

 

私の場合、こちらの説明に納得していただけなかった際には、「何回か施術して効果が認められなければ施術者の方針に合わせる」ことを条件に、患者の求めるとおりに施術しています。

 

条件を承知していただけなければ施術をお断りします。

 

もちろん、緊急性の強い場合や、鍼灸治療が不適当と判断した場合も施術をお断りします。最初にお示しした極端な例は、これにあたります。

 

 

治療をお断りしたことでじねん堂の悪評が立とうが、それはそれで仕方のないことです。

 

また、“何回か施術して効果が認められなければ”の段階でドロップアウトしておいて、言いたいことを言われた経験もありますが、「せやから?」といった感じです。余所で治療を受けて楽になって頂ければと存じます。

 

 

 

なかなか納得し難いことを話すこともあるかと存じますが、ご自身の益となる可能性もありますから、なるべく施術者の声には耳を傾けていただき、場合によっては質問をし、ご納得いただきたいところです。