2016/08/10
三重県津市の鍼灸師、西出隆彦でございます。
“類は友を呼ぶ”と申しますように、疑り深い人間が経営している鍼灸院には、疑り深い患者様が来院されるようです。
その方は、ある治療院のホームページをご覧になって、弊院が標榜している“東洋医学的な鍼灸術”への不信感を募らせたようです。
そして鬼の首を取ったかのように、件のHPから引用したと思しき文言(アナログな方なのでメモ書きです)を私に突き付けたのです!
「血流を改善する」以外で、東洋医学の医学的な根拠があれば是非ともご教授願いたいところでございます。
…ええ。
それで充分にございます。
ここでいう“東洋医学”がどのような手法を指しているかは分かりかねますが、「浅い鍼による刺激を経穴(ツボ)に加える」行為のことであるのならば、その効果を認めていただいているのと同じなのですから。
たとえば、三陰交というふくらはぎのツボを刺激すると、骨盤内の血流が改善します。
刺激する深さは筋肉に達しない程度のごく浅いものです。
浅い刺激で、離れた部位の血流が改善するのは何故か。
この場合、自律神経を介した反射が起こっています。
副交感神経が優位になることで、血管の緊張が緩み、血流が改善するのです。
つまり、東洋医学は自律神経系に働きかけるとも言えるわけです。
血流の改善効果を認めるということは、この働きを認めるということでしょう?
となると、副交感神経の活動が優位になることで引き起こされる変化はほかにもあるので、それをも認めることになります。
筋緊張が緩和されるのも代表的な変化のひとつ。
東洋医学で、腰や肩の凝りが改善するかもしれません。
実際、私が過去に行った検証(経絡治療の本治法が筋硬度に及ぼす影響. 理療. 2011; 40: 63-64)では、手足のツボに軽微な刺激を行うことで、肩の僧帽筋という筋肉の硬度が低下する(やわらかくなる)という結果を得ています。
他には胃腸の働きが活発になったり、睡眠の状態が改善したりもするかもしれません。
私は質問者に対し、このように答えました。
「それはその通りですよ。せやけど血流がなんで改善するのか考えたら、利口な人やったら他にも色々効果がありそうって分かるはずなんやけどなあ。他にはなんか書いてませんでした?」
メモを引っ込めていただけるには“充分”だったようです。
ただ…。確かに医学的な根拠は薄いのですよね。
今回は逆説を使って言い負かしただけです。
ちょっとだけ反省。