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2015/10/22

鍼が効かないという論文について
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英語が読めないので、ここぞというときには米国在住の知人(医療従事者)に翻訳してもらう鍼灸師、西出隆彦でございます。

 

さて、鍼灸の治療効果に関する海外の報告を見ると、否定的なものがいくつもあります。

 

大抵の方は、「鍼灸には効果が認められなかった」という部分だけを見てしまうと思うのですが、ここでほんの少しだけ注意深くなってみて欲しいのです。

 

 

鍼灸と何とを比べていたのか。

 

用いられた鍼灸の手法はどのようなものなのか。

 

どこに鍼をしたのか。

 

 

よくあるのは、偽鍼とを比べた検証。

 

鍼の方はツボにブスッと刺して、偽鍼の方は鍼に似た刺さらない形状の物をツボに当てるだけというものです。

 

この手法、私からすれば“偽鍼”とはとても呼べません。

 

刺さなくても、ツボに当てることで自律神経の反射を起こすことができるからです。

 

つまり、効果の出ない偽物のはずなのに、何らかの効果が出てしまう可能性があるということ。

 

事実、私は刺さらない種類の鍼である「鍉鍼(ていしん)」や「圓鍼(えんしん)」を用いて治療を行い、自律神経症状の治療を行っています。

 

ほかにも、筋肉まで刺すのと筋肉に届かない程度まで刺すのとを比べたり、症状のある局所に刺せば効きそうな症状に対してわざわざ離れたツボを選んで刺したりというのもあります。

 

研究のデザインとして、そういう方法を取らざるを得ないのかもしれませんが、臨床家としては複雑な気分です。