2015/07/01
ネガティブな感情こそ事を起こすには欠かせない大きな力となり、いざ事を起こして上手く転がりだしたときに生じるポジティブな感情がそれを長続きさせる
…と、考えている鍼灸師、西出隆彦でございます。
しかしながら、憤怒、焦慮、嫉妬、悔恨、怨嗟などのネガティブな感情を抱くことが悪であるかのような風潮は、世間一般で非常に強いようです。
そして、笑顔、感謝、最高、仲間、絆などの耳触りの良いキーワードを頻回に発し、あるいは記述し、心身に刷り込むことで、ネガティブな感情の発露を押さえたりすり替えたりしようとする者たちも一定数存在します。
どうやらそれで社会的に成功すると考えているようですが、私は疑わしいと考えています。
ネガ→ポジ変換にエネルギーを使ってしまうと、「事を起こす」という行為に支障が出るように感じるのです。
もともと豊富にエネルギーを持っている者ならばネガ→ポジ変換をしながらも「事を起こす」という行為を当面の間は続けることができるでしょうが、それはごく一部のいわゆる「成功する人間」にだけ当てはまることであって、大抵の者は一見生き生きとして見えるが、実は与えられた作業をこなし続けるだけのロボットのようになってまうのが関の山でしょう。
これは使役する側からすれば非常に都合の良いことです。
使われる側には自分が生ける屍になっている自覚の無いことも、それに拍車をかけます。
過酷な労働を課しても功徳を積むかのように励んでくれますし、たまに美味い物を食わせたりビジョンを語ったりしてやれば涙を流して喜びますし、故障したら捨てればよいだけですし、捨てられる本人は「ボクはこの職場を去ることになったけど、最高の仲間に恵まれたことに感謝。」と勘違いしてくれますから、まさに最高。
気の毒な話です。そしてきわめて不健康。
偏った感情は、たとえそれがポジティブなものだったとしても、心身の不調を招くのです。
感情の偏りを東洋医学では「七情の乱れ」と呼び、七情が乱れることで臓腑に変調をきたすと考えられています。
この場合の臓腑とは、心身の機能を5つに分類したカテゴリーのこと。
臓腑(心身の機能)の変調を現代医学的に言えば、そう。
“うつ” や “自律神経失調症”となります。
健康でありたいのなら、感情を無理やり切り替えることはせず、できれば中庸な状態を保てるようにしたいですね。