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2015/08/26

不妊鍼灸における自律神経と卵巣のお話
不妊鍼灸における自律神経と卵巣

東洋医学の考え方に基づいた鍼灸は、自律神経の働きを整えることが得意です。

弊院が経絡治療を主たる手法に採用し、自律神経症状への施術に注力している所以でもあります。

 

不妊に対しても、自律神経症状が表に出ている方に対してはこの方法が有効であると考えられます。

しかし、それだけではなかなか妊娠に至らない事例があることも事実なのです。

 

例えば、良い卵が育ちにくいという状態。

 

卵子の成長に関しては、ある時期の栄養供給が十分であることによって、質の良いものができると考えられています。

栄養を供給するのは言わずもがな、血液です。

血液の通り道である血管を拡張させるのが副交感神経の役割ですので、東洋医学的な鍼灸で自律神経に働きかけ、副交感神経を優位にすることで卵巣の血流を増加させ、卵子の成長を促す…というのが、いかにも「自律神経の働きが整うので妊娠しやすい身体になるのです!」と推してくる施術者が使いそうなロジックであります。

 

しかしそれ、本当でしょうか。

 

ラットを用いて卵巣の神経支配を調べた報告のなかに、以下のような記述があります。

 

卵巣を支配することが知られている迷走神経を遠心性に電気刺激しても卵巣血流には影響が見られない。このことから卵巣支配の副交感神経(迷走神経)は卵巣血管の調節には関与しないと考えられる。(花田・内田ら,2004)

 

つまり、東洋医学的な鍼灸で副交感神経を優位にさせても、良い卵は育たないかもしれないということです。

 

もちろん、卵巣血流の増加以外のメカニズムによって質の良い卵が育つかもしれません。ただ、東洋医学的な鍼灸だけではなかなか妊娠に至らなかったいくつかの症例(発表)を拝聴あるいは拝読すると、望み薄な印象です。

また、交感神経の活動が相対的に抑えられることで(交感神経は卵巣血管を支配していて、卵巣血流を減少させるように働きます)、血流の減少を防ぐことはできるかもしれませんが、これも消極的な策に思えます。

 

そういう場合、東洋医学的な手法に固執せず、もっと直接的で効果の検証がなされている方法を選択することが、施術者の取るべき道だと私は考え、実行しています。

 

別の神経の経路を刺激したり、血流そのものがコントロールされる方法を用いたり。

 

経絡治療だけが鍼灸ではないですし、鍼灸だけが不妊を改善させる手段でもないのですから。至極当然のことですね。