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不妊症患者を悩ませる冷えの原因とは ―不妊鍼灸の立場から―

2016/01/09
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不妊症・不育症の治療に注力中。鍼灸師の西出隆彦です。

 

前回の「数字から紐解く、不妊の原因が冷えではない事実 」ではアンケート調査等の数字から、冷えが不妊の原因とは言えないことを推察し、冷えは不妊の原因ではないものの、並行して存在する“無視できない”問題のひとつとして、改善に取り組む必要があると結論づけました。
また、冷えの原因と不妊の原因に共通したものがあるとも述べましたね。

今回は、冷えの原因について、不妊や鍼灸と絡めてお示しできればと存じます。

 

冷え症 さて、冷え症とは、文字通り「冷え」を主体とする疾患で、末梢血管の収縮や拡張による血行障害が引き起こされている状態であると考えられています。
ではその血行障害を引き起こす要因はというと、これがなかなか単純ではありません。

 

外的要因によって冷やされて末梢の温度そのものが低下する・筋肉の緊張やむくみによって血管が締め付けられている・毛細血管があまり発達していない・筋肉の発達が十分でない・貧血・動脈硬化・心臓の機能低下。…など。
組織血流量の低下とか、循環動態の悪化と言われる状態が複合的に働いて、冷えの病態を形作っているのです。

 

また、血管の運動をコントロールしているのは自律神経ですので、器質的な要因を除けば、精神的・身体的ストレスにより“冷え症”が発症したり増悪したりするとも考えられます。

不妊鍼灸の分野では自律神経機能の改善を第一義としていて、不妊に対する鍼灸治療を適切に行っていくうちに冷えの症状も改善していくことは度々経験することです。

 

内分泌に目を向けると、エストロゲンレベルの低下は末梢血管の収縮を起こすとされています。これによる血行障害のために“冷え症”が引き起こされると考えられます。このことは、先に紹介したアンケート調査の中で、30代・40代・50代と年齢が上がるにつれて冷えを自覚する者の割合が増加していることに関連付けられます。
エストロゲンレベルが低下しているということは、卵胞が発達していないのかもしれませんし、エストロゲンの働きによってなされる子宮内膜の発育が不十分であるかもしれません。
この状態が続けば不妊となります。冷えと不妊に共通の原因と言えるでしょう。

 

「筋肉の緊張やむくみによって血管が締め付けられている・毛細血管があまり発達していない・筋肉の発達が十分でない」ことは不妊の直接の原因とは言えませんが、手技療法やエクササイズによって筋肉や血管の状態が改善し、下肢の循環が十分確保できるようになれば、骨盤内の血流も増加し、子宮や卵巣に良い影響をあたえることが期待できます。冷えと不妊に共通したアプローチと思われます。

 

以上のように、冷えと不妊には共通した原因があり、双方に効果を期待できる手法があるのです。
弊院でも、「冷えは不妊の原因ではない。」と言及しながら、実際に行っている治療が『いわゆる冷え取り』なのはこのためです。

 

ひょっとして、「結局やってることは同じなんだから、『冷えが原因』って言っても差し支えないじゃない。」と、感じましたか?

 

残念ながら、それは間違いです。

 

確かに、冷えと不妊には共通した原因があります。
と、同時に、共通でない原因もあるのです。

例えば、冷えを自覚している不妊女性の不妊の原因が、冷えの原因とは別のところにあったとしたら…。
冷え取りに終始したところで、妊娠に至ることはないでしょう。その不妊が、鍼灸(あるいはエクササイズや手技療法)に不適応な病態である可能性もあります。

 

原因を冷えばかりに求めるあまり、生まれてくるはずだった命の芽を施術者が摘み取ってしまうのです。

 

「冷えは不妊の原因ではないものの、並行して存在する“無視できない”問題のひとつ」と、すでに述べました。
これに加え、冷えは不妊鍼灸の治療効果を推察する指標となり得ると、私は考えています。
しかしそれは、鍼灸(あるいはエクササイズや手技療法)の適応症例に限ってのことです。
我々施術者は、目の前の病体が自分の手に負えるのかどうか、本当に自分の治療が患者様の益となるのか、留意する必要があります。

 

不妊の原因を冷えと断じるような施術者は、そのような意識を欠いているように思えてなりません。

 

 

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じねん堂鍼灸療院

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